2015 聴診のススメ 代表世話人ご挨拶

初めの一歩

みなさま『聴診のススメ』に際しまして一言ご挨拶もうしあげます。

本講習会『聴診のススメ』は日常臨床でややもすると軽視されがちな聴診を はじめとした循環器領域の身体所見を基本から学ぶ機会を作りたいという思い で始めたもので今年第 9 回を迎えます。毎年、研修医、ナース、検査技師、薬 剤師、理学療法士等いろんな立場の方が参加されています。これまでも聴診の 基本を中心に講義してまいりましたが、今年はキャッチフレーズをあえて『は じめの一歩』としました。もう一度基本に立ち返ろうという意図です。

私は毎日聴診をしております。したがって、収縮期雑音があるな、とか、III 音はなくなったな、当たり前のように使って病状を判断しています。しかし、 初めて聴診器を持った人にはI音とII音、雑音、はおろか、膜とベルの使い分 けも簡単ではありません。本講習会でもI音、II音、収縮期雑音、拡張期雑音 と十分な解説をせずに用いているのかもしれません。しかもこういったことは なかなか今さら聞くのもはばかられますし、意外と教科書にも書いていません。

医学論文でも受験問題でも、英文を読む機会を想像してください。何となく 文意はわかってもキーワードの意味が分からないと十分に理解できないという 経験は誰にでもあると思います。身体所見も全く同様で『何となく雑音がある』 というのと『心雑音があり重症大動脈弁狭窄の可能性が高い』と判断できるの は大いに異なります。

今回、もう一度基本に立ち返り、一から身体所見を勉強したいと思います。『今 さら聞けない』ことを再確認する場にしようと思います。基本から理解して日 常臨床で身体所見が有効に使える礎を作っていただければこれに勝る幸いはありません。

2015年 1月
吉川 純一