2016 聴診のススメ 代表世話人ご挨拶

みなさま、ようこそ『聴診のススメ』へ

この講習会は循環器領域における聴診をはじめ視診、触診といった身体診察(physical examination)の基本を学ぶ目的で作られました。2007年に第1回の講習会を開催し今回10回目を迎えました。

現代はスマホ全盛時代です。スマホに向かってしゃべるとインターネットに接続され、さまざまな情報を手に入れることができます。どこのレストランがおいしいのか、どこで買うと安いのか、お店の営業時間は何時から何時までか、果ては目的地のまわりの景色がどうなのか、なんてことまでわかってしまいます。確かにスマホ情報は便利で有用ですが、もちろんそれがすべてではありません。点数の高いレストランにいけば大きな間違いはなさそうです。しかし、一方で本当においしい店は人には教えない、ということもあります。自分の足で探し自分の舌で見つけた『ここぞという手ごたえのあるお店』はスマホでは見つけられません。

さて、この講習会のメインテーマである身体所見はどうでしょう。身体所見は検体検査とも画像診断とは異なります。大した道具は不要ですがトレーニングを積んでいないと取れません。身体所見の教育を受けていない人が触診で心拡大を診断できるでしょうか? 聴診で肺高血圧がわかるでしょうか? 答えは当然『No』です。一方、熟練を積んだ人がとれば心拡大も肺高血圧もかなり高い精度で診断できます。言い換えれば身体所見は自分の能力技術を駆使して手や目や耳を使ってとる情報、つまり『手ごたえ』のある情報です。スマホ情報は誰でも簡単に得られる情報、身体所見は自分でとった手応えのある情報と言えると思います。これらは相反しません。どちらも有効に使うことができます。

本講習会に参加されるみなさんが身体所見という『手ごたえ』のある情報を感じ取っていただければこれに勝る喜びはありません。ともに学びましょう。よろしくお願いいたします。

2016年正月   代表世話人 吉川純一