2015 循環器フィジカルイグザミネーション講習会 世話人ご挨拶

みなさま、第13回循環器physical examination講習会へようこそ。本講習会は日々機械化コンピューター化されていく現代医療の中でともすれば忘れがち、軽視されがちなphysical examinationを原点に返って見直そうという趣旨で開催されているものです。今回で13回目を迎えますが、毎年全国40を超える都道府県から250名余りの参加者を得て開催させていただいております。

第1回講習会の際は、聴診の勉強にお金を払って参加する人などいるだろうかと危惧しておりましたが蓋を開けてみれば300名を越える申しこみをいただきました。当時はFAXでの参加受付でしたが、連日医局に舞い込むFAXを驚きと喜びとともに眺めたのを覚えております。その後も10年以上にわたり参加者数を減らすことなく続けてくることができました。

我々にとってのこの『うれしい誤算』は何を意味するのでしょうか?今医療の現場ではありとあらゆる情報が手に入ります。心不全を例に挙げるならばEF、左室容積、左房容積は言うに及ばず拡張能指標やストレイン値、もちろんBNPも簡単にわかります。しかしそんな中でも病態を把握し治療方針を決定するのに身体所見を必要としている、あるいは参考にしたいと思っている医師が少なくないということではないでしょうか。さらに言えばコンピューターに取り囲まれ、氾濫するデータに溺れそうになっている現代医療だからこそ自分の手と目と耳で直に得られる身体所見に『確かな手応え』を感じているのではないでしょうか。

本講習会が皆さまにとって診療の基本を学ぶ場であるとともに診療の『確かな手応え』を体得する場となることを願ってやみません。どうかphysical examinationを学ぶ楽しさ、習得する喜び、そして難しさや限界も含めて存分に体感していただき、さらには皆さま一人ひとりにとってなにか新たな収穫があることを祈念しております。

吉川 純一、室生 卓