大学病院時代、研修医とラウンドしている時、肥大型心筋症の患者が入院し、心尖拍動を触れることを日課としていた。
明瞭なdouble apical impulse。
ある時、その患者が胸痛を訴えた。
すぐに駆けつけ心尖拍動を触れると、明らかに部位が内側に偏位していた。
研修医にも確認してもらったが所見は明らかだった。
胸痛の原因は何?流出路狭窄が悪化した?SAM?議論はやまない。
そんな状況をみて、病棟で最も怖い看護婦から「速く心電図とりなさいよ!」と一喝され、心電図をとると見事なST低下あり、緊急カテで不安定狭心症と診断されPCIにて胸痛は改善した。
術後の心尖拍動は正常な部位に戻っていた。
吉川純一先生をはじめとする、師の時代はphysical examinationができて一人前であったが、現代はスピードを要求される時代。
学ぶべき知識も膨大である。
古きをたずねて新しきを知る。
そんな、現代版「診察の仕方(視診、触診、聴診の基本)」。
お楽しみに。
榊原病院 林田晃寛