代表世話人挨拶
循環器physical examination講習会代表世話人の室生卓(むろうたかし)と申します。本講習会は2016年6月に惜しくも他界されました吉川純一先生が2003年に立ち上げたもので、毎年神戸の地で講習会を開催してきました。また、2017年からは本講習会の弟分ともいうべき教育プログラムである『聴診のススメ』、さらにはベッドサイドでphysical examinationを学ぶ『循環器Physical Boot Camp』も本講習会が主催することになりました。
ご存知のとおり、吉川先生はphysical examinationの造詣が深くまた教え上手で、なによりphysical examinationを大変愛しておられました。神戸市立中央市民病院時代の部長回診では『心雑音は心臓が悲鳴を上げているんや!』とか『心尖拍動は心臓がここにいることを訴えているんや!』と所見を取りながらいっておられました。
われわれは言われた所見を確認するのに精一杯だったのですが、吉川先生はphysical examinationを通じて患者さんの心臓と対話し、またそれを楽しんでいるようでした。ですから所見が何かしら生き生きとしているようでわれわれも『いつかこんな風に所見が取れるようになりたい』と思ったものでした。
しいて例えればこんなことではないかと思います。楽譜を渡されて演奏することを想像してみてください。まったく同じ楽譜でも初心者は楽譜どおりに演奏するのに精一杯です。一流のプロの手にかかればその楽譜は美しい音となり、時に切なく、時に勇ましく、観衆は酔いしれ感動し心揺さぶられます。ときには涙さえ誘われます。つまり吉川先生のphysical examinationは『感動のphysical examination』だったと言えると思います。
本講習会が皆様にとってphysical examinationを学習するのみならず『生きたphysical examination』を体感、習得でき、『感動できる』ものにしていきたいと思います。
どうぞよろしくお願い申し上げます。